2012年2月29日水曜日

民間事故調  事故の検証 福島原発

福島の原子力発電所事故の検証については 現在大きくみっつの調査会が活動しています。活動目的は刑事罰や行政罰をみつけることではなく事故を検証し改善を見つけ将来に活かすことです。

民間事故調(福島原発事故独立検証委員会): 有識者が行っている調査。調査に強制力がないので委員の熱意と分析力が頼みの綱。役所より役所的といわれる東電は民間事故調のヒヤリングを拒否した。

政府事故調: 委員長は畑村洋太郎東京大学名誉教授。失敗における考察で失敗学を創設した人です。政府事故調には設立の法的根拠がないままであるといわれている。委員たちは報告書提出後も多かれ少なかれ行政府と関係のあるところで生きてゆく人たちばかり、また 政府事故調の事務局は官僚たちなので行政組織に批判的なことは強く書けないだろうと予想する人が多い。中間報告では、工学的な面に重きが置かれていたように感じた人が多い。

国会事故調: 国会が設けた事故調査委員会。国会で証人喚問するといった国政調査権を行使できるので調査権限は強いといわれる。 政治力学を排除して有力な議員たちが犯した過ちを公平に批判できるかどうか問われる。



今回発表された民間事故調の報告書

調査に限界があったと見られているが、みっつの調査会のなかでは一番優れた報告書になるであろうとぼくには思える。

腐れ縁がないので忌憚のない報告が随所にみられ、なおかつ内容の価値が高い。他の二つの調査会からはきっと得られないだろうと思える。

随所に鋭い批判を加えている報告書であるが、ぼくが一番感心したのは 3月15日東電が撤退したいと漏らしたことに対して菅首相は東電本店に乗り込み押し留めたことを正しく評価していることです。菅首相の個性が正負両面に出たのは確かだ。 国民の放射能に対するパニックに対して管首相が『我らはこの島で生き続ける』と宣言できていればその後の対応はもっとちがっていただろう。

菅首相に個人的な恨みなどさらさらない身であれば批判的なことを書くことははばかれるのであるが、彼は公人であったので書かせてもらいます。いち市民運動家のままに彼は首相にまで登りつめてしまった。市民運動家の本質をさらけだして見苦しかった。彼には組織を統括して危機管理することなど本来できないことだったのですが、彼のとった行動のなかで正しいところは正しかったと評価した報告書。報告者たちの面目躍如です。

あの時、この国の多くのジャーナリストは、東電に罵声を浴びせる菅首相を『首相のパフォーマンス』と激しく非難していた。

ついでに触れると、民間事故調は船橋洋一氏の働きかけで動き出したプロジェクトです。船橋洋一氏はA新聞の主筆を勤めた方です。A新聞は日本人が骨太の精神を失った元凶のひとつと思っていますが(発行部数が多いので勢力は依然ありますが、いつか国民から見放されるでしょう)、民間事故調の内容はあっぱれと思って昨日の新聞に載った要旨を読みました。 変革の時代が来た。この国は面白くなって来た。